2011年10月31日月曜日

文京区小石川・春日 撮影;2011.10.27

◎TOKYO PHOTO  ; KOISHIKAWA,KASUGA 27.10.2011










さくら並木のある播磨坂に出る。左手には共同印刷の大きな看板。小石川4丁目、3丁目の路地を歩くと、小さな製本工場の機械の動く音や製本された本を運ぶ車が行き交うようすを見る。大きな印刷工場の近くにはこのような小さな製本所がたくさんある。

六角坂、堀坂、富坂などの坂道を横目に文京区役所のある文京シビックセンターまで来る。目の前には東京ドームと小石川後楽園が見える。東京都庁のように展望台までエレベーターで直行では味気ないが、こちらは25階の展望ラウンジまで昇降する途中、同じように昇降する区職員がいて働いているようすや職場が覗けるのは面白い。

25階に展望ホールがあり、夕日に浮かぶ新宿、池袋、文京区内、スカイツリーが美しい。この展望ホールは間接照明になっていて、窓ガラスに光が反射しない。新宿方面が見える場所にはカメラマンが大勢シャッターチャンスをねらっている。残念なのはもっとも華やかな霞ヶ関、赤坂、六本木など千代田区、港区、品川区方面が見えないこと。そちらを望むのは同階のシビックスカイレストランからだけ。新宿の高層ビルの向こうにぼんやり見えた富士山が時間の経過とともに、くっきり浮かび上がる。

photo ; 宇都宮 保
文 ; 長谷川

2011年10月30日日曜日

文京区白山 撮影;2011.10.27

◎TOKYO PHOTO  ; HAKUSAN 27.10.2011








白山通りに出る手前、浄心寺坂の途中に「八百屋お七の墓」がある。このお七、恋した男逢いたさに放火未遂を起した罪で捕らえられ、鈴ヶ森刑場で火あぶりの刑に処された。江戸本郷の八百屋の娘でまだ16歳だったという。井原西鶴の名作『好色五人女』の中に登場することで有名になった。

浄心寺坂を下ると白山下の交差点。向こうの白山通りにもうひとつ白山下の交差点がある。近くに東洋大学や京華学園高校などがあるので若者が多く活気がある。教会の幼稚園や東洋大学第2キャンパスを左手に見ながら蓮華寺坂を登って、右手の小石川植物園の塀にそって御殿坂を下る。趣のある坂道だ。学校帰りの高校生や小学生の姿も目にする。受付の人から植物園を見るには一時間以上かかると言われ、今回は時間がないことから断念。

千川通りの植物園前交差点から播磨坂へ向かう。そろそろ陽が傾いてきた。

photo ; 宇都宮 保
文 ; 長谷川

2011年10月28日金曜日

文京区千駄木から白山まで 撮影;2011.10.27









千代田線千駄木駅から日本医科大の脇を抜けて大学同窓会の橘桜会館前に出ると、夏目漱石旧居跡の碑がある。ここは漱石が明治36年から4年近く暮らし『吾輩は猫である』や『坊ちゃん』などを執筆した家があった所。漱石の妻、鏡子が語り娘婿の松岡譲がまとめた著書『漱石の思い出』の中に、室内の見取り図や漱石の暮らしぶりが描かれている。この本、妻鏡子の飾り気のないあけすけな性格からか、漱石のいろいろな側面が直截に語られていて、とてもおもしろい。

家にあるわずかばかりの畑から郁文館中学校の運動会が見えると『漱石の思い出』の中でも語られるが、すぐ隣に郁文館中・高校がある。そしてこの一帯は寺と坂と路地が多い。寺が多いから緑も多く、落ち着いた佇まいをみせる。

狭い路地をくねくね曲がりながら、ほうろく地蔵のある大円寺まで来る。

photo ; 宇都宮 保
文;長谷川

2011年10月27日木曜日

港区白金台 撮影;2011.10.19

◎TOKYO PHOTO  ; SHIROKANEDAI 19.10.2011







渋谷区恵比寿から目黒区三田、品川区上大崎を通過して港区白金台に出る。歩いても30分くらいの距離だが4つの区を跨ぐことになる。広大な敷地の国立自然教育園は台地、湧水池、小谷、湿地などができる限り自然本来の姿に近い状態で保たれていて、今なお武蔵野の面影をしのぶことができる所という。同じ敷地内にある庭園美術館の前に来ると中高年の人でにぎわっている。たまたま60歳以上はこの日入園料が無料だったのと、前日NHKの番組で放送されたこともあるだろう。

シロガネーゼと呼ばれるセレブたちの御用達ショップが並ぶプラチナ通り(外苑西通り)に出る。シロガネーゼという言葉は女性月刊誌の編集者が作り出した造語。「白金やその隣接エリアで生まれ育ち、高収入の夫を持つ、あるいは高収入の仕事を持つ女性」をイメージしていて1998年頃マスコミに頻繁にとりあげられた。モダンで上品なショップは周囲の緑と街並にとけこんでいる。

少し歩くと歴史を感じさせるレンガ造りの東大医科学研究所があり、隣接して塀に囲まれた聖心女子学院高・中・初等科がある。聖心女学院のある白金4丁目三光坂周辺は由緒あるまさに豪邸が並ぶ。

photo ; 宇都宮 保
文 ; 長谷川

2011年10月25日火曜日

渋谷区恵比寿 撮影;2011.10.19

◎TOKYO PHOTO  ; EBISU  19.10.2011






動く歩道「スカイウォーク」を通って、久しぶりに恵比寿ガーデンプレイスに行った。恵比寿ガーデンプレイスはショッピング、オフィス、飲食からマンションまでさまざまな施設があり、六本木ヒルズやミッドタウンなどの大型都市開発の先駆けともいえる所。施設の中央に広々とした吹き抜けがあり、それを囲むようにショップや飲食施設などが配置されていて気持ちいい空間。エビスビール発祥の地でビール一杯…というのも楽しそうだ。

敷地内の東京都写真美術館ホールでは映画祭<ショートショートフィルムフェスティバル&アジア>が毎年上映されていて、今年も10月27日から30日まで行われる。世界各地から応募された3000を超える短編映画の中から選ばれた作品が上映される。

線路の向こうに巨大な赤い球体がくいこんだ奇抜な建物がある。地図を見て「日の丸自動車教習所」に違いないと確信する。あの球体の中はどうなっているのだろう。

photo ; 宇都宮 保
文 ; 長谷川

ベルンハルト・シュリング著『朗読者』を読む

著者は1944年ドイツ生まれ。社会派の弁護士で、作家としてはそれまでにミステリー小説を3冊出しただけで無名に近かった。1955年に出版した本著『朗読者』がベストセラーになる。20カ国以上で翻訳され、アメリカでは200万部を超えるミリオンセラーに。2008年には『愛を読むひと』のタイトルで映画化され話題を呼んだ。

15歳の少年ミヒャエルは、学校からの帰宅途中に具合が悪くなったところを母親ほどの年齢のハンナに助けられる。お礼の花束を持ってハンナの部屋を訪ねたミヒャエルであったが、ハンナの持つ大人の魅力に惹き付けられ、一週間後また彼女の部屋に行ってしまう。ハンナを手伝って石炭を運んだミヒャエルは煤だらけになり、言われるままに風呂に入る。

バスタブから出る彼を、大きなタオルで抱きしめたのは裸のハンナだった。二人は愛し合うようになる。ハンナから本を読んでほしいと請われると、学校の教材の『オデュッセイア』から『戦争と平和』まで毎日読み続ける。朗読し、シャワーを浴び、愛し合い…2人の時間は朗読によって一層濃密なものになっていった。

そんなある日、ハンナは突然姿を消した。

数年後、大学の法科に通うようになったミヒャエルは「強制収容所ゼミ」で実際の裁判を傍聴する。そこで再会したのは法廷に立つハンナだった。ハンナはナチ親衛隊の収容所の看守として、戦争犯罪に問われ裁かれている5人の女性のひとりだったのだ。彼女らが起訴されたのは、アウシュビッツに送るための囚人選別を行ったこと、囚人を閉じ込めていた教会が爆撃され火の手があがったとき、扉を開けなかった為にほとんどの囚人が焼死してしまったことによる。裁判が進むにつれて、他の4人の被告はハンナを主犯格に仕立てあげる。ハンナも闘うが次第に追いつめられ、“ある秘密”の露見を恐れて全面的に罪を認めてしまう。

この本には読者の心を揺らす展開が何度も用意されている。21歳も年上のハンナとの恋。姿を消したハンナが戦争犯罪人であったこと。彼女が秘密をもっていて、そのことで無期懲役という重刑につながったこと。ミヒャエルはある時ふと気付く。ハンナがどうしても隠し通したかったことが何であったかを。服役中のハンナに対し何年もの間ミヒャエルのとった行動とハンナの思い…。著者ベルンハルト・シュリングはふたりの物語を通して、過去に犯した罪をどのように裁き、どのように受け入れるか…そのことを問い、深い余韻を残す。

文:長谷川京子

2011年10月24日月曜日

渋谷区代官山(2) 撮影;2011.10.19

◎TOKYO PHOTO  ; DAIKANYAMA no.1  19.10.2011









旧山手通りと八幡通りがぶつかる所に、奈良の平城遷都1300年記念事業の巨大ポスターがある。大仏の写真に「新しい奈良が始まる。」のコピー。周辺にある最先端のショップと歴史のある大仏の対比がおもしろい。ポスターのある建物も古く奈良県のアンテナショップが入っている。

外車が通りすぎたかと思うとゴーカートのようなものを乗り回している人もいて実に個性的な街だ。このひとの格好、カートに乗ったスーパーマリオそのもの。

代官山アドレスガーデン前の代官坂を下る。坂の途中に自転車アートが展示されている。代官山インスタレーションという2年に1度開催される屋外公募展で、10月9日(日)~30日(日)まで各所でアート作品が展示されているという。

“渋谷から代官山まで地下化のための工事中”との看板のある踏切を渡る。踏切から急な登り坂になり、一番上まで来たかと思うとまたすぐ下り坂になる。渋谷にも坂が多い。

photo ; 宇都宮 保
文 ; 長谷川