2014年11月17日月曜日

映画『グランド・ブダペスト・ホテル』 監督・脚本:ウェス・アンダーソン

2014.11 The Grand Budapest Hotel
コミカルだがシリアスである。空想的・幻想的な物語のようでリアルな時代嗅覚にも優れている。不思議な映像である。ファシズムが台頭し世界大戦へと突き進む1930年代を、ドラマの重要な時代要素のひとつとして描いているからだろうか。

とはいえ、超一流の名門ホテルである『グランド・ブダペスト・ホテル』を舞台として描かれるこの映画は、レイフ・ファインズやジュード・ロウなど、多くの豪華俳優たちの好演も手伝って、「ル・パナシュ」(主人公のグスタヴ愛用の香水)のように心地よい気品とかおりを提供してくれる。

『グランド・ブダペスト』のコンシェルジュであるグスタヴは、謎の死をとげた大富豪のマダム・Dから、遺言によって名画「リンゴを持つ少年」の所有者に指名される。その絵をグスタヴから取り戻そうとするマダムの息子ドミトリーの策謀。そして、マダム殺人のぬれぎぬを着せられ、ことの真相を突き止めようとするグスタヴと彼の弟子ベルボーイのゼロ。その二人にドミトリーが送り込んだ殺人鬼が迫る。

こうしたスリリングな展開部を、監督のウェス・アンダーソンは欧州の美しい街ち並みや自然を背景に、アニメのような変則的なコマ回し映像を駆使して最高の見せ場を作ることに成功している。また、この映画の複眼(いや主眼かもしれない)として、没落する貴族階級への冷厳な目線とファシズムへの恐怖を描いていることも、この作品の評価として忘れたくない視線である。

◎第64回ベルリン国際映画祭において審査員グランプリに輝いた。

◎PHOTOS OF TOKYO CITY by t.utsunomiya
http://photos-of-tokyo.blogspot.jp/

◎東京都市モノローグ2011年の総集編(漂流する東京)
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http://www.utsunomiya-design.com/photograph/tokyophoto3.html

text ; Utsunomiya

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