2015年10月26日月曜日

「我が国の安全保障」講演者:藤原帰一(東京大学講演会)

◎TOKYO PHOTO ; 25.10.2015

昨日、10月25日(日)午後2時30分から、東京大学本郷キャンパス法学部31教室で、藤原帰一氏による講演会が開催された。テーマは今もっともタイムリーな『我が国の安全保障 現状と認識』について。入場無料で誰でも聴けるとあって、学生ばかりでなく市民の参加も目立った。

安保法制が可決されて1ヵ月。憲法や立憲主義をないがしろにする現政権のやりかたに強い怒りを覚えていた。国際政治の専門家がこの現状をどう認識しているのか、そして安全保障政策はどうあるべきと考えているのか、興味を持って話を伺った。

講演のなかで、自民党政権の安全保障政策を時代を追って言及している点は興味深かった。敗戦後、吉田茂のとった“吉田ドクトリン”では、国力の全てを第二次世界大戦後の経済復興に充て、その間の国防をアメリカに担ってもらうという考え方をとった。その後、1977年の福田赳夫首相の“福田ドクトリン”では、復興した日本が、経済外交によって東南アジアへの影響力拡大をはかった。ODA(政府開発援助)が、日本の戦後賠償の意味合いを持っているという指摘もなるほどと思った。

そして現在、“安倍ドクトリン”では、西側同盟の一員であることを誇示し、軍事・経済両面で台頭する中国への対抗意識をあらわにしている。安保法制への前のめりな強行姿勢もその延長にあるようだ。多くの日本人は、安保法案成立によって、“アメリカの戦争に巻き込まれる”ことを懸念しているが、オバマ政権にとっては、日本が中国に対して仕掛けた紛争に巻き込まれることを、むしろ危惧しているとの説明があった。

日本の対中関係と日米同盟、また、現在最も懸念されているシリア情勢などにも触れた。氏は現実的に軍事力を行使しなければ解決しない問題があることも指摘している。その際、空爆などの最も愚かな方法は使わず、従来から国連が進めてきた方法に戻るべきだと言う。大切なことは一般市民や難民の安全を確保すること、彼らが安全な場所に移動できる手段を確保すること。そして何より、軍事力を使わず国際紛争を解決するためのギリギリの交渉が求められると指摘する。

それぞれの国によって見方が代わり、また同じ国の中でも多くの点で政策や考え方が分かれている。国際紛争の解決には、複雑に絡まった糸をひとつひとつ解きほぐしていく膨大なエネルギーが必要だと思う。

マスコミから流される情報ばかりに振り回されず、多角的視点から安全保障について考えていかなければならないと感じた。


◎PHOTOS OF TOKYO CITY by t.utsunomiya
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◎東京都市モノローグ2011年の総集編(漂流する東京)
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photo ; Utsunomiya
text;Hasegawa

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